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5. 東ベルリンのスーパーで [1986年~91年東ドイツ回想録]

東ベルリンの街並みはなんとなくモノクロだったがそれはそれでなんとも趣があった。
・・と今になって思う。
西側のような派手な飾りもネオンもなく、静かなたたずまいだった。

ある日、うちのアパートの斜向かいの食料品スーパーに買い物に行ってみた。
面積としては大きなスーパーである。
売っているものは黒パン、ビニール袋に入った牛乳、バター、チーズ、野菜のびん詰め、パスタ、小麦粉、調味料、ハム、ソーセージ、肉、ジャガイモ、玉ねぎ、にんじん、ビスケットやお菓子・・
・・・などなど。しおれたきゅうり、きゃべつなども・・・・
結構何でもある。だいたい最低限基本的な物はある。もちろん、これで十分普通に暮らせる。

ただ、西側の人が見たら違いは歴然としていた。何の工夫も凝らされていないお店の
雰囲気もさることながら、
レタスなどの新鮮な葉物野菜や、色とりどりの野菜、季節外のくだものや南国の果物・・
こういったものはほとんど見かけたことがなかった。
スーパーの一角で人の行列があった。何だろう?と思って一番前まで行ってみると、
それはバナナだった。
当時はまだめずらしかったバナナを求めて人々は並んでいるのだ。
バナナが貴重品の時代・・日本では何年前のことだろう・・とそのとき思った。
私はこの列には並んではいけないと思った。

社会主義国の優等生だった東ドイツは、普通の生活を営むには十分満たされていたと思う。
世界に誇る博物館だって演奏会だって、オペラだってある。
ただ必要以上の贅沢はできない。
贅沢や娯楽がなくて不満を感じる人達はそれを知っている人たちである。
昔、贅沢な物がない時代にはそれを当たり前として過ごせたのだろう。
それを知らなければそれはそれで幸せに生きていけるものではないだろうか。
国家が西側の文化、情報を入れたくなかったのはそんな事情でもあった。

東ベルリンの大聖堂とテレビ塔


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